キッチンスプーン

2016年8月21日 12:49
みちのり

好きなことを仕事にしていて、いいですね。

そうおっしゃるひとのお顔を、わたしはじっと見ました。

ありがとうございます。

つい最近なんです。 こんなふうになれたのは。

わたしはかつて、料理が心底いやになったことが何度もあります。

高校を卒業後、大阪の辻調理師専門学校のフランス料理専門カレッジに行きました。

一年という約束で、フランスで学び住み込みで働きました。

もうこのまま、この国で恋をして家族を持ってもいいと、ほんとうに思っていました。

帰国後、神戸で7年過ごしました。

フレンチのレストランとパン屋さんと、ハーブ園で働きました。

神戸がわたしを育ててくれました。

松山に戻ってから、当時結婚していたひととワインバーをしました。

やがて夫婦が夫婦でなくなっていきました。

同じ料理人の彼をわたしはずっと尊敬していましたが、もうだめでした。

むすめを連れて、出張料理人とケータリングを2年したあと、山で店をはじめました。

ひどいやめ方をしたこともあります。

若いころはそもそも意気地がありませんでした。

離婚したときは、だれにも何も言わず、お礼もお詫びも説明もしないまま

店を出ました。

お世話になったひとに、だれひとりとして、じゅうぶんにご恩を返せていません。

悔いの多さには、自覚があります。

18歳のとき、わたしは好きなことを仕事にえらびました。

なにひとつ、うたがわなかった。

39歳になった今、ようやく、わたしはこの仕事が好きだと言えます。

毎日ただ一心に料理をしています。