キッチンスプーン

2017年9月 7日 20:12

8月9日(水) くもり 秋の空気。
6時半  起床。テラスへ出る。正面に朝日を受けたモン・サン・ミッシェル。
    ホテルの芝生と畑との境目に、野うさぎが2羽。灰色でしっぽがくるんと
    白い。起きてきた菜々子をそーっとテラスに呼び寄せる。日がのぼる。
    朝食・・バゲットスライス けしの実とごまのカンパーニュ 発酵バター
    ハム3種 ポテトのハーブソテー チーズ(コンテ・ブリー)カフェオレ。
    パンとバターで天に召される。どれもぜんぶおいしい。ここの朝食は地元
    の味がする。パンもチーズもミルクもハムも。ひとくちひとくちかみしめ
    る。はちみつやジャムとならんで見慣れない瓶詰めがある。同じツアーの
    ひとが、これはなんでしょうねと首をのばす。ラベルを読もうと顔を上げ
    ると地元のマダムと目が合う。あの、と声をかけてたずねる。張りのある
    声でキャラメル味のりんご入りチョコクリームですよと教えてくれる。同
    じツアーの別のひとがやって来て、わたしこれ好きでしたと言う。そう伝
    えると、マダムは口元だけをきゅっとしかめ、そう。ほんとのこというと
    わたしこれ苦手なの。と手をひらひらさせている。
9時  モン・サン・ミッシェルへ。
    パーカーをはおる。菜々子は薄型の白いダウンジャケット、たみ子さん
    は青いウインドブレーカー。この寒さ予想外。直瀬の10月のはじめく
    らいだ。ノルマンディーに入ってから、あちこちでりんご実が鈴なりに
    なっているのを見た。納得。
    門をくぐる。古い石積み 赤いばら 苔むした屋根 お墓の十字 門前町
    石畳の狭い坂道 簡素な服装の若いシスター つめたい石柱 木の天井 
    塔のてっぺんで金色に輝くミカエル像 灰色の海 森 逃げないかもめ。
    フランス人の神への愛がひしひしと伝わる。
    朝のうちは人出が少なく昼にどっとふえた。「直瀬100年分」と菜々子。
12時  昼食・・塩味のオムレツ(この地の名物料理。オムレツというよりも、直
    火で荒削りに仕上げたバター風味の素朴なスフレという感じ。)ロースト
    チキン 山盛りのフライドポテト パン
    ファーブルトン(赤ワイン煮のプラム入り堅焼きプリン。ひとさじでふうっ
    と気が遠くなるほど甘い。はちみつをそのまま食べているくらい。フランス
    人は、甘さを控えるなんてこれっぽちも良いと思わないのかもしれない。)
    ツアーガイドの碇さんは、この仕事をはじめて20年。
    多いときは月に二回、10日間の海外ツアーガイドを務めているという。
    彼女の雰囲気がどこか日本人離れしているのはそのためだろうか。日本人は
    ほんとうにモン・サン・ミッシェルが好きなんですよ。なぜでしょうねと、
    柔らかくわらいながら低い声でつぶやく。
    少し離れたところにいるたみ子さんが、感動で涙ぐんでいる。
    さあ。なぜですかね。
    2回目のモン・サン・ミッシェル。はるばる来たかいがありました。
    はじめて参加したツアー。
    楽ちんでたいへん。これにつきる。
    手配はすべておまかせ。自由はすくない。少々きゅうくつ。安心して観光
    に専念できる。じっくり立ち止まることはできない。ガイドさんの知識を
    シャワーのように浴びるたのしさ。でも、必死になって何かを感じ取ろうと
    汗をかく機会はほとんどない。しかしツアーも良い。一緒に旅する人たちと
    だんだん打ち解けてくるのがなにより気に入った。奈良から来た70代くらい
    の女性は、30人いるこのツアーの最高齢にもかかわらず、みんなと足並みを
    そろえ城を登り肉を食べ群集の中でもけろりと明るい。ご立派です。
    バスでロワールへ移動。
    急いでいるのだな。すさまじいスピードでバスは走りに走る。ブレーキとカー
    ブがめっぽう強くて、体がぽんと持っていかれたりする。
    地平線まで伸びるとうもろこし畑、にんじん畑、ひまわり畑、収穫後の畑。
    たみ子さんが、夕食をキャンセルしたいと言う。胃の調子に不安があるようだ。
    菜々子もそうすると言う。途中立ち寄ったサービスエリアで、食べ慣れた味に
    近いものをさがす。なかなかない。キットカット発見。
18時  ホテル着。のびのびと洗濯。良い気分。
    いざというときのためのカップヌードルを作り、熱いうちにふたりにすすめ
    る。たみ子さんが一気に元気を出す。体調が悪いのではない。ただもうひどく
    くたびれて、気楽になりたかったのかな、と思う。家ににいるときとおんなじ
    に、ゆっくりお風呂に入るといい。菜々子、読書しながら1時間入浴。
22時  就寝。
    
    

    

2017年9月 7日 15:54

「マダムはね、わがままなんです。 世界中どこに行っても。」
お帰りの際。
最初から最後までやりたい放題だったお客さまにひとこと。
言いたいことは言いますよ。
のびのびと。
思ったときに思ったことを本人に。
マダムたちは一瞬目を見開き、さざめくような笑いとともに
外国製のうつくしい車でお帰りになりました。

カテゴリ:お店について
2017年9月 5日 17:12

8月8日(火) うす曇り 肌寒い。
3時半 起床。よく寝た。真っ暗だ。菜々子はまだぐっすり眠っている。
    ベットからそっと身を起こし、枕元の灯りをつける。空に月。ほそく
    窓を開け街の音を聞く。音を立てないようしずかに起き出し、荷物整理、
    書き物、身繕いなどをしてのんびり過ごす。5時、菜々子が目を覚ます。
    くつろいだいい顔つきでゆるりと起き上がる。外の暗さにたまげている。
7時半 朝食・・クロワッサン 食パン いちごジャム フルーツポンチ 
    コーンフレークにミルク ハムサラダ ポテトにケチャップ(菜々子)
    クロワッサン バゲット バター ヨーグルト 熱いコーヒー(晶子)
    ツアーの人たちと短い挨拶をかわす。みなさんよく寝れましたか。
    バスでジヴェルニーへ出発。
10時  モネの庭へ。牧羊地が近い。空気が甘い。世界中からありとあらゆる草木花が
    集まっている。ひまわり ばら セイジ ラベンダー 時計草 ゼラニウム 
    ゆり ヘリオトロープ 牡丹 エキナセア マリーゴールド 柳 竹林 睡蓮
    画家が愛したしずかな庭をしずかに歩く。雨の中、写生している親子がいた。
    菜々子とふたりで、モネの家と水の庭をまわりもどると、たみ子さんが売店から
    顔を出しこっちだよと手招きしている。買い物・・りんご入りキャラメル2袋
    池の庭の写真のはがき20枚 駐車場の並木道で石を拾う。菜々子に渡す。
    バスでルーアンへ出発。
12時  ルーアン市内のビストロで昼食・・野菜のポタージュスープ 鴨のロースト 
    パン マッシュポテト ウフ・アラ・ネージュ(ひっくり返るような甘さ)
    古く、活気があり、人々の顔があかるい。ルーアン在住の日本人女性の案内で
    歩く。説明がたいへん丁寧でわかりやすい。彼女は、ご縁があって暮らし始めた
    この街に、やがてつよい魅力を感じはじめ、今では大量の本に囲まれて暮らして
    います、とにっこり笑う。行く先々に知人がいるようで親しみのこもった挨拶を
    かわしている。菜々子は古い看板の上のすずめや、ボールを追う犬を見つけては
    目を輝かせる。ノートルダム寺院へ。こころと体がしーんとする。しみこむ、
    美。ジャンヌ・ダルクが火刑を受けたという場所に、聖女を悼む高い塔がたって
    いた。その塔の目の前でマルシェが賑わう。何というか、人間は底抜けにたくま
    しい。バスでモン・サン・ミッシェルへ出発。途中立ち寄った商店で買い物・・
    かご入りミニトマト、オーガニックのりんご。小ぶりで握るときゅうっと固い。
18時  目に入るのは、草色の地平線とひかる水平線と透明な空だけ。そこに唐突に現れ
    るモン・サン・ミッシェル。ここまでの道のりが一気にふきとぶ。大天使ミカエ
    ルの3度のお告げに従ってつくられたというこの修道院は、シルエットだけでも、
    こう、浮き世離れっぷりがすごい。20年ぶりに来た。うれしい。一心に見る。
20時  ホテルで夕食・・スモークサーモンとサラダ パン サーモンのグリルと温野
    菜のクリームソース(食べきれない)りんごのタルト(たいへんおいしい)
    部屋に戻り、あつい紅茶をゆっくり飲む。テーブルの上にノルマンディー銘菓
    真っ赤な小袋入りのバタークッキーがたくさんたくさん用意されていた。
22時  夜のモン・サン・ミッシェルに行きたいと菜々子。それは見事にライトアップ
    されているようだ。充分に厚着をして外へ。潮風に目を細めながらシャトルバ
    スを待つ。と、お通じの気配。同じツアーの人たちに菜々子を頼み部屋に戻る。
    たみ子さんが風呂上がりの肌からほかほか湯気を立てている。一時間ほどして
    大満足の様子で帰ってきた菜々子の話を聞きながら、ふたりで入浴、洗濯。
24時  気絶するように就寝。 
   


    

2017年9月 4日 07:59

8月7日月曜日 くもり 次第につよい風
5時   起床。ベットの上でヨガ45分。
    ニュースで天気を確認すると警報が出ている。おお。飛ぶか飛行機。
    空は灰色でほのあかるく風もさほどつよくない。
    ホテル内で朝食・・玄米ごはん ねぎとあげのみそ汁 焼き塩さば
    大根おろし つけもの 佃煮 梅ぼし 海苔 お茶 
7時半  関西国際空港着。
    発着便を確認。欠航もそこそこある。
    07AUG(MON)1030 OSAKA-KANSAI(1) AIR FRANCE  
     わたしたちの飛行機は飛ぶのだ。この台風をものともせず。
    おおきくひと息つき、目を閉じる。よかったねえと家族を振り返ると、
    そんなのあったりまえですといいたげな顔が大小ふたつならんでいる。
    今回は日本旅行のツアーに参加する。わたしと菜々子はツアーははじめて。
    集合場所、第1ターミナルビル4階団体受付カウンターへ向かう。
10時半  関西国際空港発。
    前の方の席に盲導犬を連れたひとがいる。犬は主人の足もとにしずかにいて、
    つやのある栗色の毛をときどき客室乗務員になでてもらっている。
    機内で昼食・・チーズとプレーンのクラッカー きゅうりとレタスのサラダ 
    かぼちゃサラダ ドレッシング 牛肉と野菜の煮込みとサフランライス 
    カマンベールチーズひときれ バター 塩こしょう カップ入りの水 
    焼きりんごのケーキ コーヒー  ハワイのときの1000倍おいしいと菜々子。
    3年前の秋は、機内食の最初のひとくちで涙ぐんで、食べられなかったのだ。
    ちびの菜々子は、山から持ってきた赤いりんごを、ぷんすか怒りながら
    いくつもいくつも丸かじりしてたっけ。映画「この世界の片隅に」を観る。
    窓の外の雲の切れ間から陸地が見えた。ひとっこひとりいない乾ききった
    荒野ばかりにみえる。「ロシアはでっかいねえ」と菜々子。
    たみ子さんは徐々に水分が抜け、ややしんなりしてきているものの、まずまずの
    踏ん張り。順番に交代で窓側の席につく。
    軽食・・きゅうりとレタスのサラダ パン ラタトゥイユとペンネ
    カットフルーツ(りんご・キウイ・桃のシロップ煮)
    窓の向こうにヨーロッパの町並みが見え始める。12時間の空の旅もそろそろ
    おしまい。時計を現地時間に合わせる。
16時   シャルル・ド・ゴール空港着。日本時間では22時。
    着陸後「ビヤンヴニュオパリ、アシャルル・ド・ゴール」とアナウンス。
    懐かしさでへたり込みそうになる。ようこそって言ってるよとふたりに伝える。
    バスでホテルへ。人々の暮らしが見えてくる。道に店に窓にゆきかうひとに。
    ホテルの窓辺に座り、通りに連なる石造りのアパルトマンをながめる。
    ベランダの植物の鉢植え、椅子とテーブル、ハンモック、ともる灯り。
    飽きない。夕食の買い出し・・うす緑のぶどう種なし2房 クロックムッシュ
    チキンとトマトのハンバーガー キウイフルーツのタルト あつい紅茶。
    くもり空の雲が少しずつ濃くなって光が薄まりゆるやかに日が暮れる。
    2年前に見た夢をふいに思い出す。わたしは旅支度のまま、今日のように
    菜々子と肩をよせ異国の日暮れを見下ろしていた。石畳が雨に濡れていた。
    馬車が通り、紳士が通り、少年少女が通る。皆、しずかに晴れ晴れと。
    部屋はちょうど今いる部屋と同じくらいで、あめ色の頑丈な木のベットに
    金の糸でふちを刺繍した、濃い緑のベルベットのカバーがかけてあった。
    ホテルの1階がレストランになっていて、あかるい厨房に白い湯気と色彩が
    あふれている。初めて会うなつかしい人たちとわたしはそこで働く。
    菜々子は明日から学校だね、うん。というような話をした夢。
22時   洗濯、入浴。日本時間では朝6時という時間に就寝。
     
    


      

2017年9月 3日 15:09

8月6日 日曜日 濃い灰色雲 
5時   起床。ヨガ30分。いつも朝はのんびりのたみ子さんが、
     朝食の支度をしてくれている。庭に野菜をとりに出る。
     湿った風が強くうねる。
     朝食・・パンケーキ ハッシュドポテト ケチャップ 
     きゅうりとトマトのサラダ あつい紅茶 ミルクティー(菜々子)
     10時に久万高原町を出発するバスに乗るつもりでいた。
     休日のためその便はないと気づいたのが朝食後。9時のバスに変更。
     バス停はここから車で20分。トランクにスーツケースを積みこむ。
     わたしのは紺色。20年前に買ったもので古くておおきいが中身があまり
     詰まっていないので持ち上げるとあっけないほど軽い。菜々子のは小ぶり。
     新品のライトグリーン。ちいさいくまさんがぶら下がっている。
     たみ子さんはわたしが8年前に新調したものを使う。彼女は今回が初の海外。
     荷物を積むその背中を大粒の雨が打つ。嵐の気配を肌で感じる。
     出発。直瀬の橋を越えるまで、広島に黙祷。
9時   久万高原町のケーキ屋、プティクリフで車を預かってもらう。
     開店前の支度中だったふたりがほのぼのと見送ってくれる。
     JRバスの乗り場へ。真新しいバスに乗り込む。おおらかに揺れ出発。
     途中立ち寄った駅の、パン屋のイートインコーナーで小休止。
     菜々子は紫芋のあんこ入りドーナツをおかわりした。タクシーで空港へ。
12時半 松山空港。ひとの波をぬけ搭乗口へむかう。
     ロビーでぼんやりしていると目の前で唐突にフラダンス・ショーがはじまり
     あっけにとられる。極彩色。びっくりしたまま見て、びっくりしたまま拍手。
     まだびっくりしてるな、と思いながら手荷物検査を受ける。
     ゲート前は一変してしずか。空気がほどよく冷えている。
     窓の向こうにおおきな飛行機。気分が清々する。
     もぎたてテレビが四国中央市産のキャビアを紹介している。
     ソファで昼食・・おにぎり弁当(晶子)・サンドイッチ(菜々子・たみ子)
     サンドイッチをたいらげたふたりから、代わる代わるおにぎりをねだられる。
     今、台風は九州にある。そのためなのかどうなのか
     この日の飛行機はとてもほんとうとは思えないほどゆれた。
     ちいさな子どもが心底こわがって、ひゃあひゃあひいひい声をあげる。
     そばへ行って、なでさすってやりたくなるほど。
     菜々子がぴったりすがりつく。たみ子さんはすやすや眠っている。
     大阪伊丹空港着。リムジンバスで関西国際空港へ。
16時半  空港前にある日航ホテル着。今日はここで一泊して、明日フランスへ発つ。
     たみ子さんは、荷物を広げ、備え付けの部屋着でベットに長々とのびている。
     もう夕食は部屋でかんたんにすませたいと言う。いいんじゃない。
     ホテルを出て、菜々子と空港を散策。
     多国籍な人々が旅支度でゆきかう。空港内で円をユーロに両替する。
     菜々子、異国のお札に見入っている。
     無印良品で紺色のスニーカー、洋品店で薄いピンクの腕時計(菜々子)
     ここに住みたいなあと、やたらめったら実感のこもった声でつぶやく12歳。
18時   部屋に戻り入浴。「パリでメシを食う」という本を読みはじめる。
     食べものの話かとあたりをつけて買ったけれど、どうもちがう。
     パリで好きな仕事で身を立てるという話だった。
19時   夕食・・おにぎりとコロッケ、カップヌードル(菜々子)どんべい(たみ子)
     空があかるく晴れ、見事な夕焼け。窓辺の椅子に座り白湯を飲む。
     たみ子さんがにこにことカップヌードルをすすめてくれる。
     ふたりの非常食としてわたしのスーツケースに入れておく。
     台風は今、四国。
22時   就寝。

     


     

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